第一六回あすなろ忌に参加して
                  臼井三夫

 

 二〇一七年四月九日、私の住む渋川市ではまだ三分咲きだった桜も、高崎に近づくにつれて満開になり、午前中の雨も上がり、高崎市役所近くの広場では、大勢の人が集まりイベントが開催されていた。
 私はあすなろ忌に参加するのは三回目で、崔華國さんとの面識もなく、伝説の詩人としての知識程度しか持ち合わせていない。
 会は、曽根ヨシさんが体調を崩して不在のため、志村喜代子さんのあいさつで始まった。藤井浩さんが、今年は崔華國さんの没後二十年目にあたること、また新聞の切り抜きを持参して朔太郎記念館が移設になり、今日から公開が始まることに触れた後に、グストの細田博造さんの紹介を川島完さんが行った。
 細田さんは、 一九四三年東京生まれの在日二世。六十五歳から詩を書き始め二〇一二年に出された第一詩集『谷間の百合』で第一八回中原中也賞、二〇一五年の第三詩集『水たまり』で第二二回丸山薫賞を受賞している。元気のいいユーモアセンスのある詩人だ。
 今回のテーマは「崔華國と金素雲」を語るという。藤井さんが聞き手で、細田さんが答える。金さんは、死の直前に書いた文章で「自らを祖国でも、またよその国ででも、定着ということを知らずに過ごしてきた人生。転がる石には苔が付かぬとは言うけれど、私は自分自身の持ち物を、どれ一つとして大事にし、尊重したことはなかった」と言っている。一九〇八年、釜山・絶影島に生まれ、一二歳で日本へ密航。二十歳で出版した『朝鮮民話集』が北原白秋に絶賛され、詩人として立つ。一九三七年朝鮮人ゆえ、予防検束的に検挙され、半年間大森署に勾留される。戦時中は主として日本で童話集や歴史物語などを出版する。
 最後に詩の朗読があった。中でも、平方雪子さんの金素雲の『朝鮮民話集』から『ネギを植えた人』の暗唱は、感動を与えてくれた。人が人を食べないために、ねぎを植える。この民話の意味を重く受けとめたいと思った。
 関口将夫さんから、来年のあすなろ忌についての希望が語られた。私のようなよそ者にとっては、崔華國さんのような特異な人物が生きていた高崎の街、死後二十年たってもこのように多くの人に影響をあたえ続けていることを、うらやましく思う。群馬は詩人が多く生まれ、大手拓次をしのぶ「薔薇忌」が二十回、「朔太郎忌」が四十五回目を迎えている。残念ながら、私の生まれた故郷にはない。願わくば若者に引き継ぎがうまくいくように祈るばかりだ。

(会報301号より)

 

第16回  あすなろ忌

 

日 時  4月9日(日)午後2時より
参加費  5,000円
    (第1部のみ参加は資料代・珈琲代850円)

 

【第1部】講演・詩朗読
    (14:00~ 16:30 カフェあすなろ)
  講演「崔華國と金素運『朝鮮詩集』」を語る
     細田傳造氏(詩人)
      1943年東京生まれ。
      2013年『谷間の百合』で中原中也賞受賞
     聞き手 藤井浩(上毛新聞社論説委員長)
  詩朗読 志村喜代子、斎藤みね子、平方雪子、黒川初美、関口将夫 (敬称略)

 

【第2部】懇親会
    (17:00~ 19:00 豊田屋旅館)

 

 連絡先/事務局・藤井浩
     電話090-4913-1772

 

以下、昨年までの資料です。

 

第15回 あすなろ忌     三枝 治


 三年前に復活したcafeあすなろで、4月10日第15回「あすなろ忌」が開催された。
 「あすなろ忌」は、1982年に閉店した「名曲茶房あすなろ」をしのび、また、あすなろの創建者で経営者であった詩人の崔華國氏をしのぶ会でもある。
 わたしもはたち前後の4年間、高崎で暮らしたことがあり、その当時「あすなろ」に頻繁に通ったひとりである。煎りたてのコーヒーを飲みながら詩を読み、詩を論じ、またバロック音楽に聞き入った。わたしの青春はあすなろの雰囲気で彩られていると言ってもいい。
 あすなろ忌が、高崎市鞘町の再開したあすなろで開かれるようになってから、この催しにわたしも参加するようになった。″あすなろに強い思いを寄せる者のひとりとして"。
 今回のあすなろ忌は、発起人代表の曽根ヨシさんの挨拶の後、詩と音楽を中心に異分野の人々がつどって文化・芸術活動を展開した「あすなろ」にふさわしく、歌とトークと題して、メゾソプラノ歌手である天田美佐子さんが、シューベルトの「野ばら」や日本歌曲の「花の街」などを伸びやかに歌い上げた。「あすなろ」で生の歌声を聞くのは、はじめての体験であったが、さながら「天上界」まで響き渡るような高く澄んだその歌声に戦慄と感動を覚えた。天田さんも若きころ「あすなろ」に通い、音楽の道に進んだのもあすなろがあったからだという。天田さんも
「あすなろ」と深い縁でむすばれたひとりなのである。
 つづいて、上毛新聞論説委員長の藤井浩氏が、「あすなろ」を追いかけてという演題で講演。藤井氏は、崔華國と、その周辺の人物にもふれながら、あすなろの歴史について熱く語った。
 詩の朗読は、志村喜代子、平方雪子、黒川初美、斎藤みね子、関口将夫さんがおこなった。

(会報297号より)


第15回  あすなろ忌


 第15回「あすなろ忌」を下記のとおり開催いたします。

ぜひご参加くださるようご案内申し上げます。

 

        記

 

Ⅰ 日時 2016年4月10日(日)午後2時~

 

Ⅱ 会場・内容

 

 【第一部】歌・講演・詩朗読
 カフェあすなろ (高崎市鞘町 電話027‐ 384‐2386)
     午後2時~4時30分

 歌とトーク 私の歌と「あすなろ」  天田美佐子(メゾソプラノ)
 講演    「あすなろ」を追いかけて 藤井浩(上毛新聞社論説委員長)
 詩朗読   志村喜代子 斎藤みね子 平方雪子 黒川初美 関口将夫

 

 【第二部】懇親会
 豊田屋旅館(高崎市八島町68 電話 027ー322-3137)
      午後5時~7時


Ⅲ 参加費 5,000円

     (第一部のみ参加は、飼料代珈琲代850円)を当日受付にていただきます。


Ⅳ備考  ○第一部会場の「カフェあすなろ」は高崎駅西日から徒歩10分 駐車場はありません。
     ○「豊田屋旅館」は「カフェあすなろ」から徒歩10分

 

事務局  曽根ヨシ 〒371‐0044前橋市荒牧町1168-24

                      電話 027-232-6251

 

第十四回「あすなろ忌」        関口将夫


 映画「ここに泉あり」を観て、「郷土を美しい詩と音楽で埋めましよう」を心に、崔華國氏が「あすなろ」を開店したのが五十八年前。そして崔華國が生まれて百年と言う歳月が過ぎようとしている。今年八月には「詩と思想」で崔華國生誕百年の特集も組まれるようです′。
 「あすなろ」が閉店したのが三十一年も前だったが同じ場所、同じ店で新たに開店した「あすなろ」で第十四回「あすなろ忌」が開催された。約60名の参加者が集い、講演と詩朗読が行われた。今回の講師は、高崎市民新聞取締役と編集主幹を三十年やっていた、小見勝栄氏を招いた。氏は高崎市教育委員会の教育長も務め、現在「あすなろ学園児童クラブ」園長でもあり、著書に小説『憂鬱な休暇』『沼賀健次伝』等がある。講演は「あすなろ本町時代と高崎の群像」と言うテーマで話が進められた。
 氏が経済大学生の頃、文芸部で出版していた「三扇文学」の会合や、校正等も「あすなろ」に集い行われ、ほぼ毎日のように「あすなろ」に出入りしていた様子や、学生達の活動の場であり、学生達の文化の拠点的位置にあったことなど生き生きと話をしてくれた。そして地域における文化活動の重要性と、今後どのように展開をしながら、文化の場を維持して行かなければならないかを、熱く語ってくれた。そして「あすなろ」が閉店して三十一年の歳月が流れて、消えたはずの「あすなろ」が、まるで「ここに泉あり」の泉のように一筋の光と共に湧きだしたのではないかと思われると結んでいる。氏が児童クラブを開園する時、迷わず「あすなろ学園」と名付けたことでも、氏が若き頃より「あすなろ」に通い深く心に残っていたことが伺える。
 最後に学生当時一緒に「三扇文学」で活動していた、詩人の渡辺慧介氏が「あすなろ」をテーマに書き下ろしの詩を、塚越美月さんのビアノ演奏と共に朗読してくれた。
 コーヒータイムの後、李美子さんによる韓国語の詩朗読。井上敬二氏のギター弾き語りで、崔作品の「鯛」と自作詩の「最後の女」を朗読してくれた。中林三恵さんの流暢な韓国語と日本語の詩朗読。最後に黒川初美さんと私で崔華國の詩を構成した詩の朗読をした。
 参加者の中から、川島完・中村不二夫・原田道子さん達から貴重なスピーチをいただき閉会した。
 「あすなろ忌」は、ただ単に崔華國の作品を顕彰するだけでなく、同時に文化の「場」とはなにか、崔華國が為していた人と文化の交流、そして地域における「文化の磁場」とはなにか、それらも同じ視点で考えているのだと思っている。

(会報292号より)


第14回  あすなろ忌


崔華國氏の生誕百年を迎え、第14回「あすなろ忌」を下記のとおり開催いたします。

ぜひご参加くださるようご案内申し上げます。

 

        記

 

Ⅰ 日時 2015年4月5日(日)午後2時~

 

Ⅱ 会場・内容
      (第一部)
 カフェあすなろ (高崎市鞘町電話027‐ 384‐2386)
     午後2時~4時30分
 講演 「あすなろ本町時代と高崎の群像」
 講師 小見勝栄さん
 詩朗読(崔華國氏の作品)
   韓国語  詩人  李 美 子 さん
   日本語  中林三恵さん、斎藤みね子さん、井上敬二さん、黒川初美さん
 スピーチ
      (第二部)
 豊田屋旅館(高崎市八島町68 電話 027ー322-3137)
 懇親会  午後5時~7時


Ⅲ 参加費 5,000円

     (第一部のみ参加は、飼料代珈琲代850円)を当日受付にていただきます。


Ⅳ備考  ○第一部会場の「カフェあすなろ」は高崎駅西日から徒歩10分 駐車場まありません。
     ○「豊田旅館」は「カフェあすなろ」から徒歩10分
     ○不明な点は事務局までお問い合わせくださし、

 

事務局  曽根ヨシ 〒371‐0044前橋市荒牧町1168-24

                      電話 027-232-6251

 

あすなろ忌見聞録         福田 誠


 去る四月十三日、第十三回となるあすなろ忌が高崎のCafeあすなろで開催されました。その概要をレポートしたいと思います。以前は高崎駅近くの哲学堂等を会場としていましたが、昨年からCafeあすなろを会場としての第二回目であります。うららかな春の日曜日の午後の行事でありました。
 主催者に確認してはいないのですが、小生が数えたところによるとざっと七十人近く、Cafeあすなろの二階はほぼいっぱいとなりました。一階で営業中のカフェからコーヒーの香りとヴィヴァルディの曲が二階に届く中、午後二時開会となりました。司会は田口三舩さん、挨拶はあすなろ忌発起人会代表の曽根ヨシさん。そして、経過報告ということで上毛新聞社論説委員長の藤井浩さんの報告がありました。当日配布された藤井さん編集の「第十三回あすなろ忌資料」は大変貴重と思われます。特に崔さん自身が書いた「あすなろ始末記」は興味深く読ませてもらいました。
 講演は中村不二夫さんで、演題は「崔華國の国境の越え方」であります。中村さんの講演内容をまとめるのは能力のない小生にはとても難しく、限られた紙面でもありますので、心に残ったセンテンスを掲げ読者に推測してもらいたいと思います。「朔太郎や賢治のように五十年、百年経っても崔さん論を著す人が出てほしい」「単なるナショナリズムでなく、民族とはひとつの摂理である」「国境を越えるにはキリスト教はよいツール」「崔さんはさらに晩年詩人というツールを得る」いやーこれだけでは余計に誤解を招いてしまいますね。ごめんなさいね。
 来年生誕百年を迎えるにあたって「詩と思想」で崔さんの特集を組む予定だそうで、今から楽しみであります。
 中村さんの講演の合間に曽根さんが崔さんの作品「コーリ・パンズ」「江」「相似性」を朗読してくれました。
 その後は「Cafeあすなろ」ならではのコーヒータイム。そして次は、詩の朗読です。韓国語で李美子さんが崔さんの作品「江」と「逝く春を」を朗読し、その後志村喜代子さんと黒川初美さんが日本語で朗読してくれました。
 最後は、はるばる駆けつけてくれた方もいらっしゃったので、参加者のスピーチでした。それぞれが崔さんへの思いや自身の中でのあすなろを語ってくれました。お一人目は土曜美術社出版販売社長の高木祐子さん。次は、九州からお越しの本多寿さん、そして高崎出身の原田道子さん、さらに本県からは川島完さん。最後に曽根ヨシさんのスピーチで閉会となりました。
 閉会後は恒例の豊田屋旅館での懇親会です。今回は都合が悪く参加できませんでしたが、次回は是非懇親会まで参加したいものであります。

(会報287号より)

 

 

第13回 あすなろ忌

 

日 時  平成26年4月13日(日)午後2時より
場 所  コミュニティカフェあすなろ
内 容  講演 中村不二夫氏
演 題  「崔華国の国境の越え方」
     詩の朗読 李美子さんほか
連絡先  事務局 曽根ヨシ
     電話 027-232-6251

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パンフレット
第13回あすなろ忌パンフレット.pdf
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