前橋ポエトリー・フェスティバル2015レポ
「詩を開き、詩でつながる」
                        新井隆人


 昨年に続き第二回日となる前橋ポエトリー・フェスティバル(以下「ポエフェス」という。)を、無事実施することができた。何事も初回は注目を集め、興味も引く。二回目にこそ本領が試される。そんなプレッシャーを感じていたが、多くの仲間や賛同者に恵まれたお陰で、最終的には、前橋市内の十四会場において、約百二十名の出展者・出
演者により、三二の展示・イベントを開催することができた。東京で三月に開催したプレイベントも含めれば、出展者・出演者は百五十名近くになる。規模としては昨年の倍以上となった。
 個々の展示やイベントに触れることは無理なので、三つほどポイントを絞って述べる。
 一つ目は、東京の詩人たちにポエフェスを認知してもらうべく、東京でイベントを開催したこと。三月一日に荻窪のブックカフエ6次元を会場に「前橋ポエトリー・フェスティバル・in 東京」と題して、トークイベントと詩の朗読会を行った。告知はネットとロコミだったのだが、約三十名の参加者を得て、満員御礼となり、東京の詩人たちの前橋への熱い思いを知ることができた。トークイベントでは、地方における詩の現状(詩人団体の高齢化と先細り、世代間の断絶)、地方での詩のイベントの意義やあり方等が語られ、参考になる意見を多く戴けた。朗読会では、多彩
なスタイルの東京の朗読シーンを垣間見ることができた。6次元のイベントの前には「お散歩写真。お散歩ことばワークショップ in 荻窪」を実施し、ここで作られた作品は、ポエフェスの期間中に換乎堂で展示した。
 二つ目は、「詩でつながれるか」という試みについて。今年のマエバシ詩学校のテーマは「詩を開く」だったのだが、ぼくが十数年間詩人として活動した中で感じていたのが、「詩が閉じている」「詩人が閉じている」といった閉塞性だった。理由は、同人や詩人団体という枠組みの中で、詩人たちが活動していることが大きいように思う。ポエフェスの一貫である焼乎堂での「現代詩手帖。現代詩文庫フェア」で、六十年代後半から七十年代の現代詩手帖のバックナンバーを入手したのだが、その誌面からは、詩がアートや演劇、音楽などと非常に密接に連動していたことが窺える。ポエフェスが目指しているのも、詩を、さまざまなクリエイターとつなげ、さらにその先の観客につないでいくことだ。もちろん、詩人同士をつなぐ場であることも言うまでもない。二三日のマエバシ詩学校とポエトリー・リーディングの参加者について言えば、県内や東京ばかりでなく、宮城や愛知、埼玉、栃木、神奈川など、国内各地から詩人が訪れてくれた。同日夜のレセプションでは、四十人以上のクリエイターが集い、懇親を深めた。とある県外の若手詩人は、ポエフェスのおかげで友達が三十人増えたそうだが、ポエフェスが、詩を開き、詩でつなぐことを実現できたエピソードとして、嬉しく受け止めている。
 三つ目は、社会情勢に合わせて詩のあり方が変化していることに敏感であること。若者の雇用・所得状況が厳しくなっている中、現在当たり前のように定着している、高い詩集発行費、同人参加費を払い、できあがつた詩集や詩誌を、詩人同士が無料で寄贈し合うという、贅沢で閉じた関係性は、どこか不健全で不純なものになっていないだろうか。若い詩人たちは、金銭の授受をして詩集や詩誌をやりとりしていることが多い。その清廉さに、ぼくは詩の未来を感じる。余談だが、先だって、生前関係の深かった、亡くなった若手詩人の遺稿集を購入したのだが、寄贈されている詩人もいることを知って、残念に思った。寄贈と販売の判断は、遺族によるものなら構わないが、今回のケースは遺族が判断できるとは思えない。誰かが勝手に判断したのだとしたら、それは越権行為であるし、なにより不純だ。本人が発行した詩集について本人が寄贈と販売の判断をすることには異論はないが、遺稿集はそのあたりの判断が難しいから販売しないことが多いのだと思う。詩の世界の不健全性の事例として、掲げておく。
 詩を届けるには、まずは、人とつながらなければならない。人とつながる場であること。ポエフェスの一番の意義は、そこにある。

(会報292号より)


前橋ポエトリー・フェスティバル2015

   ~マエバシ猫町~

 

日程:2015年5月16日(土)~5月31日(日)

   ※プレスタート 2015年4月25日(土)


会場:前橋文学館 煥乎堂3階ふるほん書店 虫の音 馬場川通り紅茶スタンド シネマまえばし

        ギャラリー・アートスープ 前橋まちなか音楽館 アルキロコス 和心会


連携会場:萩原朔太郎記念館(敷島公園内) FRASCO さくらカフェ


主催:芽部・前橋文学館


後援:思潮社・土曜美術社出版販売


協力:アトリエサード NEKO EXPO 七月堂


エクゼクティブパートナー:広瀬大志 北爪満喜


詳細は以下HPをご確認ください

 http://mebu-maebashi.com/poefes2015/index.html



ーーー以下、昨年の資料です。------------------------------------



詩人の立ち位置
前橋ポエトリー・フェスティバル2014を振り返って
                                                                      新井隆人

 

 今年五月に開催した標記のフェスは、開催期間十六日間、開催場所六会場、展示・イベント総数十五、出展者・出演者約六十名という規模だった。主催は、ぼくが代表を務める団体「芽部」で、前橋文学館を会場とする展示・イベントに関しては前橋文学館が共催したほか、思潮社、土曜美術社出版販売の後援
を得た。展示やイベントを個々に紹介するには、残念ながら誌面が不足しているので、ここではコンセプトや趣旨に絞って述べることにする。公式ホームページも立ち上げたほか、「商工まえばし」七月号ではインタビュー、「詩と思想」九月号ではレポを掲載したので、詳細はそちらをご覧いただきたい。なお、前橋文学館で開催したマエバシ詩学校(テーマ「詩はどこにある?」)は、全五コマの講義録を「詩と思想」八月号から連載している。また、TH (トーキングヘツズ)叢書五九号でも「ダンス・のをあある」のレビューを掲載しているので、併せてご覧いただきたい。
 本題に入る。詩のフェスティバルはどこでも開催できるものではなく、風土や歴史といった裏づけが必要となる。その点、前橋は、全国でも限られた詩のフェスが説得力を持ち成立し得る土地であるといえる。その理由は言うまでもないが、萩原朔太郎や萩原恭次郎等、日本を代表する近代詩人を輩出し、市の
キャッチフレーズを「水と緑と詩のまち」としており、前橋文学館を有するなど、詩にゆかりの深いまちだからである。しかし、現状はどうかというと、残念ながら詩は厳しく寂しい状況にあり、先行きの見通しも芳しくない。そこで、前橋における詩の復興を願い、フェステイバル開催を思い立った。幸いにし
て、アーツ前橋効果で街なかに集い出したクリエイターたちと知り合うことができた。詩人だけでは無理であっても、多くのクリエイターの力を借りれば開催できる。それは結果として、詩を題材としながらも、詩の枠組みを拡大し、詩を幅広い人たちにアピールできるフェスとなった。詩に興味がない人や、興味はあるが躊躇している人が、フェスをきっかけに詩をより身近に感じてもらえたらいいな、と思っていたが、その思惑はある程度達成できたという感触を得ている。
 実は、群馬詩人クラブと共催したいという思いもあった。だが、ぼくが幹事を務めていた前期の幹事会には、詩人クラブを外に向かって開こうという意志がなかった。「詩人クラブは親睦団体で、会費は会員向けに使うべき。外部に向けたイベントをやりたいならクラブでなくて自分でやればいい」というのが当時の幹事会の主たる意見だった。……群馬詩人クラブの立ち位置はどうあるべきか。親睦団体で事足りるのか。そして詩人の立ち位置は。ぼくの出した結論がこのフェスなのだ。

(会報288号より)


マエバシ詩学校「詩はどこにある?」 撮影新井隆人
マエバシ詩学校「詩はどこにある?」 撮影新井隆人
詩と音楽のオープンマイク 撮影:竹沢佳紀
詩と音楽のオープンマイク 撮影:竹沢佳紀

前橋ポエトリーフェスティバル2014

 

主催   芽部・萩原朔太郎記念 水と緑と詩のまち 前橋文学館
     ※前橋文学館の共催は、前橋文学館内で実施する展示、イベントのみとなります。

後援   思潮社/土曜美術社出版販売

開催時期 2014年5月10日(土)〜25日(日)

開催場所 前橋文学館/アーツ桑町/煥乎堂本店/アルキロコス/交水社/FRASCO

 

詳細は以下のサイトを参照してください。

http://maebashifes.web.fc2.com/index.html#no5 

 

展示

 ●展示1「北爪満喜展 キオクの鏡」-詩+写真 

     開催場所 前橋文学館3階オープンギャラリー

          前橋市千代田町三丁目12-10 Tel.027-235-8011
     会期   2014年5月10日(土)〜25日(日)9時30分〜17時(金曜は〜20時)

     出展者  北爪満喜
     料金   無料

  ●展示2「前橋の風景を詩にする 〜 前橋周辺の詩人によるグループ展」
       開催場所 前橋文学館1階ミニギャラリー

          前橋市千代田町三丁目12-10 Tel.027-235-8011
     会期   2014年5月10日(土)〜25日(日)9時30分〜17時(金曜は〜20時)
     出展者  新井隆人、石井秀人、椎名真義、菅沼順子、須田芳枝、関根由美子、

          曽根ヨシ、高田芙美、堤美代、長井美智代、藤見&Rei、眞鍋苑子
     料金   無料

 ●展示3「ANOTHER VIEW 見る朔太郎

                〜 クリエイターによる朔太郎詩のビジュアル化展」
       開催場所 前橋文学館3階オープンギャラリー 

                              前橋市千代田町三丁目12-10 Tel.027-235-8011
               会期       2014年5月10日(土)〜25日(日)9時30分〜17時(金曜は〜20時)
               出展者    浅見恵子、天田亮、遠藤尚輝、岡庭涼、加藤ひろえ、関口一秒、

          高橋加代子、竹沢佳紀、hati(つかごしはつえ)、

          山川恵里菜×tatsumi、吉田友佳、Rei
     料金   無料

 ●展示4「モノクローム・ワールド 〜 切り絵と詩のイマジネーション」
     開催場所 煥乎堂3階ふるほん書店展示スペース 前橋市本町一丁目2番13号
     会期   2014年5月10日(土)〜25日(日)10時〜20時
     出展者  新井隆人、椎名真義、菅沼順子、たいりじろー、藤見、真鍋苑子、

          梁川梨里
     料金   無料

 ●展示5 藤見×Rei

    「この展示はフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません。

                                 —空想する家—」 

     開催場所 アーツ桑町2階前橋市千代田町2丁目12-7
     会期   2014年5月17日(土)・18日(日)12時〜20時
     出展者  藤見、Rei
     料金   無料

 ●展示6「お散歩写真・お散歩ことばワークショップ 作品展」

     開催場所 アルキロコス

          前橋市日吉町4-16-8パークサイドハイツ2F  Tel.027-234-3296
     会期   2014年5月18日(日)〜25日(日)12時〜21時
     出展者  ワークショップ参加者
     料金   無料

イベント 

 ●イベント1「HOWL TO THE MOON 朔太郎をうたう 〜 朔太郎トリビュート演奏会」

     開催場所 前橋文学館3階ホール

          前橋市千代田町三丁目12-10 Tel.027-235-8011
     開催日  2014年5月10日(土)14時30分開場、15時開演(18時30分終了予定)
     出演者  アンダーソン、かべっこ、kuku、

          Jimmy+井上貴裕(doppelgangers)、島村敦子、

          関口将夫+KPC(児島清裕)、たこっ茶(たこさん&ちゃあん)、

          ポカラズ+シズカメラ
     料金   無料
 ●イベント2「お散歩写真・お散歩ことばワークショップ」
     開催場所 前橋文学館1階ミニギャラリーに集合。

          前橋市千代田町三丁目12-10 Tel.027-235-8011
     開催日  2014年5月11日(日)10時〜11時30分
     案内人  反町潤、新井隆人
     料金   無料

     備考   定員10名程度。事前予約制。
       予約先    メール(事務局 relaxin.a@blue.plala.or.jp)

                                   又は電話(新井隆人090-8048-1664)

 ●イベント3「ポエトリー・カフェ 〜 詩について自由に語ろう」  

     開催場所 前橋文学館1階ミニギャラリー

          前橋市千代田町三丁目12-10 Tel.027-235-8011
     開催日  2014年5月16日(金)18時30分〜20時
     コーディネーター 新井隆人
     料金   無料

  ●イベント4 レセプション&桑町トーク

     開催場所 アーツ桑町2階 前橋市千代田町2丁目12-7
     開催日  2014年5月17日(土)18時30分〜20時00分
     トークゲスト 藤見、Rei
     コーディネーター 新井隆人
     料金   無料

 ●イベント5「ダンス・のをあある 〜 朔太郎を踊る」
      開催場所 交水社2階 前橋市城東町1丁目1-11 Tel.027-289-4776
      開催日  2014年5月 18日(日)開場15時、開演15時30分

                                (16時30分終了予定)
      出演者  Abe”M”ARIA、大木静花+にれいとしゆき+たいりじろー+新井隆人、

           根岸由季、山賀ざくろ
                料金   1500円(1ドリンク付き)。前売り、

          事前予約等はありませんので、当日直接会場にお越しください。

  ●イベント6 マエバシ詩学校 テーマ「詩はどこにある?」

     開催場所 前橋文学館4階研修室 前橋市千代田町三丁目12-10

                      Tel.027-235-8011
     開催日  2014年5月25日(日)9時50分〜16時
     講師等  北爪満喜、河野聡子、斎木館長、生野毅、広瀬大志
     料金   無料

     備考   定員20名程度。事前予約制。
          9時50分から16時まで、すべての講義を聴講いただけることが

          条件となります。
          途中、お昼休みが1時間ございます。
     予約先  メール(事務局 relaxin.a@blue.plala.or.jp)

          又は電話(新井隆人090-8048-1664)

  ●イベント7「飛び入り自由!詩と音楽のオープンマイク」

     開催場所 アルキロコス 前橋市日吉町4-16-8パークサイドハイツ2F

                 Tel.027-234-3296
     開催日  2014年5月25日(日)16時30分〜18時30分
     ゲスト朗読(予定) 北爪満喜、河野聡子、生野毅、広瀬大志、

               特別ゲスト 亜久津歩、吉田友佳
     料金   無料。ドリンク代必要。

 ●イベント8「クリエイターによるセレクトブックフェア」

     開催場所 煥乎堂3階ふるほん書店 前橋市本町一丁目2番13号
     実施期間 2014年5月10日(土)〜25日(日)10時〜20時
     参加者  新井隆人、大木静花、加藤ひろえ、椎名真義、たいりじろー、

          hati(つかごしはつえ)、KPC(児島清裕)
     料金   入場無料(購入する場合は別途)

FRASCO連携企画「シイナイト」
 FRASCOとの連携(コラボ)企画。FRASCOのメンバー椎名真義さんが主宰し、

 FRASCOで月1回開催している、毎回テーマを決めて、くつろぎながら語り合うイベント

 です。日程等詳細は後日お知らせします。

 

問い合せ先

事務局  relaxin.a@blue.plala.or.jp
     芽部 代表・新井隆人 090-8048-1664

  

 

詳細は以下のサイトを参照してください。

http://maebashifes.web.fc2.com/index.html#no5