新しい年の活動にあたって       磯貝 優子

 

 新しい年、2016年は、戦後71年にあたるが、昨年は国内外を問わずさまざまな事件が起こり、多くの人命が失われた。穏やかな日常は激しく揺れて不安な感じがぬぐいきれない。

 こんな時に、現在の群馬県の詩的情況、先達詩人の偉業及び遺産など不勉強な私が幹事代表という大役を受けることとなった。時代に合わせておよそ何ができるのかはわかるはずもなく、途方にくれている始末ではあるが、「東照公遺訓」の中の言葉を胸にして、「急ぐべからず」とも言い聞かせ歩み出している。 他の新幹事の方は、前向きで協力的、事業などの実務にも秀でている。すべてをよく心得ていることにおいて誠に有り難いと思う。 これまでの運営に関わった方々にも感謝しながらできるだけの努力をしたい。

 群馬詩人クラブは、昭和32年(1957)に発足、会報も本号が295号となり、やがて60年の節目を迎える。会則を見ると、目的が明記されている。

 【群馬県内在住または出身の詩人及び詩の読者の共通の場として、詩の創造について相互の研究を深め、詩の社会的機能を発展させ、県内の詩活動に寄与することを目的とする。】 各詩誌に所属する人や個人として詩作に励んでいる人、詩に関心を持っている人の交流の場であり、学びの場でもあろうか。その場のために、昨年は充実した会報や60人を超える人たちの作品を集めた年刊詩集の発行、また特色ある詩画展と朗読会などが実施されたが、目的を実現するための意義深い事業であった。

 今年も総会においていただいたご意見を参考にしながら、議決された事業案に関わる仕事を着実に進めることが私たちに課せられてと考えている。

 今、時代は大きな変革期を迎えている。税制、原発、社会福祉、憲法などから眼が離せない。無関心ではいられないことが多い。詩は元々個人のものではあるが、さまざまな社会的な環境の中で内面からわきあがってくる発信するという形での作品作りがあり、それを誰かに読んでもらえることで作品の意義が生まれる。どんなにやさしい日常の言葉でかかれてあっても、その中に世界を包み込んでいるような詩、新しい発見や未来への洞察、人間的な真実、そういうものが描かれている詩が望まれるし、そういう詩が書ければ、人が読んだ時共感してもらえる。私自身が同人誌に参加してきて得られたことはそんなことが中心であったろうか。

 最近は、深い思想そのものを研究してそれを詩の表現の土台とする人や自らをよく見つめその立ち位置を言葉にする人や詩風を育てようと堅実に努力をしている人を見受ける。どんな詩に出会えるかも群馬詩人クラブに寄せる期待でありたい。 

(会報295号より)