「高崎現代詩の会」の歩み       田口三舩

 

 「高崎現代詩の会」が発足したのは1992年11月22日、ざっと22年前のことである。この日、JR健康保険センター会議室で、平方秀夫さんや馬場映兒さんをはじめとする十名の各氏を発起人として設立総会が開催され、第一歩が踏み出された。
 会誌「Scramble」創刊号の巻頭で会長の平方秀夫氏は「この会が発足し、高崎に現代詩の会を設立してよかつた、と思うことが次々にわかって来た。」と書き、高崎における先達詩人 岡田刀水士・豊田一男・柴田茂・梁田ばく氏達の詩的偉業を確認し合い、とかく散り散りになりがちな詩の仲間達との話し合いの場ができたことなどをあげて大きな期待を寄せている。
 創立当時から徐々に会員数も増えて、翌1992年3月末には31名となっている。大きな特色として、特定の主義主張や傾向にこだわることなく、誰もが自由に参加できること、長い詩歴を持つ会員に混じって今まであまり詩に関心を持たなかった人たち、詩を書き始めて日の浅い人たちが多数仲間として加わったことなどが挙げられよう。
 会則第二条では、「現代詩に係る行事と会誌などを通じ、高崎市の詩人の交流と活動の拠点となるとともに、会員の詩作の向上と相互の親睦をはかり、高崎市の文化の発展に寄与すること」を目的としている。第三条では、「詩作を主とする文芸を愛好し、高崎市に在住、もしくは在勤する者、市内の詩グループに所属する者、及び会長が幹事会に諮り承認した者」と規定している。ここでも見られるとおり、一応の対象は高崎市域としているが、これは地域を限定するものではなく、高崎市を中心とした生活の基盤となるそれぞれの地域、として共通理解しているところである。
 会誌が創刊されたのは設立総会から一か月後の1992年12月22日。この十月で132号を数え、創立当初より隔月刊として欠号することなく現在に至っている。スクランブルとは、交差点で人と車を完全に分離して、歩行者の安全を確保するためのものであり、そこは、多方向から進入してくる人たちの出会いの場でもある。そうした思いを込めて、会員による巻頭言、テーマを掲げての特集記事、書評、紹介連絡記事等、時には県内外の会員外の方にも執筆もお願いし、多彩な内容となっている。また会誌には、毎号会員作品欄を設けて発表の場としており、各方面から温かい感想などが寄せられている。
 会誌発行に合わせて、これも創刊当時から欠かすことなく実施されている例会は、会員はもちろん詩に関心を持つ会員外の方々にも呼び掛け、掲載作品について率直な意見交換合評の場として定着しているところである。
 年六回の例会のうち、一回は詩の朗読会として実施しており、これも会員に限定することなく広く呼び掛けて毎回多くの参加をいただき、明るく自由な雰囲気の中でそれぞれの個性をいかした朗読会が展開されている。
 会誌「SCRAMBLE」(115号より全て大文字)の発行、例会、朗読会と並んで「高崎現代詩の会」の主要事業として挙げられるものに、総会に続く現代詩ゼミがある.毎年4月、県内外から詩人を招いて、現代詩の核心に触れた話題を提供していただいている。
 なお、節日ごとにすでに二回発行されている会員全員参加による「アンソロジー」も、この会にとって忘れることのできない記念碑的事業である。
 こうした数々の事業を企画し実施する幹事会は、例会のない月に、つまり年六回開催されている。それぞれ分担を定め、会員の意向を受けながら、年間行事の策定、会誌編集、個々の事業、経理等、会の運営全般にわたって、話し合いを進めている。
 ここまで「高崎現代詩の会」の歩みについて簡単に触れてきたが、最近幹事会等で話題になりつつある問題をあげてみると、最も多いのは、会員の減少と固定化。その他いろいろあるが、先ず解決策として考えなければならないのは、魅力ある会にすること.そのためには、長年培ってきた「高崎現代詩の会」の原点を見つめながら、時代に即応した柔軟な考え方を大事にすると同時に、会員相互の活発な詩的交流を図ること、これに尽きると思われる。

(会報289号より)